「週刊金曜日」(2019年5月10日 1231号)で、「ゲノム編集食品の拙速な承認に異を唱える」(by 垣田達哉)という記事を読みました。
遺伝子組換え食品はすでに出回っていますが、「ゲノム編集食品」は、今後商業生産・販売が開始され、食卓にのぼるかもしれない新たな人工食品です。
遺伝子組換え食品は、「他の生物の遺伝子を組み換えた(組み込んだ)もの」ですが、記事の説明によると、ゲノム編集食品は、
そうです。
2019年3月27日に厚生労働省の新開発食品調査部会が発表した報告書「ゲノム編集技術を利用して得られた食品等の食品衛生上の取扱いについて」という報告書では、SDN-3は遺伝子組み換え食品と同様に安全性審査が必要だけど、あとの2つでは安全性審査が必要ないとしています。
安全性に問題がないので任意の届け出をすれば販売してもOK、としていますが、SDN-1とSDN-2の安全性に問題がないという理由の一つは、他の生物の遺伝子が食品に残っておらず、自然の突然変異や従来の育種技術によって突然変異を誘発させたものと見分けがつかないから、というもので、非常にずさんな感じがします。
見分けがつかんから、それで大丈夫なんかい?
その後、ゲノム編集食品の表示義務化見送りについても報道されていて(毎日新聞)、消費者庁は内閣府消費者委員会の食品表示部会で「従来の農産物との違いを科学的に検証できず、義務違反の特定は困難」とする考えを示し…とのことですが、違反の特定が困難だから義務化はやめておこう、というむちゃくちゃな論法です。泥棒に入られても、犯人を見つけるのは困難だから泥棒を取り締まるのはやめておこう、というのと同じような感じがするのですが…。
上の週刊金曜日の記事によると、EUでは2018年に、欧州司法裁判所が「自然には発生していないやり方で生物の遺伝物質を改変する突然変異誘発によって得られた生物はGMO(遺伝子組換え作物)に該当すること、従来から多く利用され長い安全性の記録のある突然変異誘発技術は非該当である」として、育種技術とゲノム編集とは別ものなので安全性審査が必要だと判断しているそうです。
人間のふつうの感覚で考えて、自然の突然変異と、遺伝子を人工的に切断するのは違うやろ、という感じです。他の生物の遺伝子が食品に残っていないとしても、そもそも人工的に遺伝子を切断した作物を食べたいかどうか…。そこは個人の感覚の問題でしょう。別にええやろ、と思う人もいれば、そんなのは不自然だし不自然な食べものを身体に絶対入れたくない、と考える人もいて当然だし、後者のほうが自然な感覚だとぼくは思うわけです。
表示を義務化しないと、選択の自由が奪われます。食べたい人はどうぞ、食べたくない人にも否応なしに食べさせます、では困ります。
国内でもゲノム編集技術を利用した作物を開発中、とのことで、たとえばどんなものがあるかというと、切っても涙のでないタマネギ(涙が出てこそタマネギや!)、目が出ても毒素が含まれないジャガイモ(芽が出る前に食べたらええだけやん。芽が出たら土に埋めて増やそう!)、時間が経っても白いままのマッシュルーム(お化けかい!)、養殖中に網に激突して死なないようにおとなしいマグロ(元気なマグロがええわ!)、筋肉が増強されたマダイ(ボディービルダーに任せとこうよ!)、というようなラインナップで、別に無くてもいいやろ~、という感じです。
「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」が下のような署名を集めているので、署名しておきました。
同キャンペーンは、ゲノム編集食品のリスクについて、こう説明しています。
ちゃんと議論し、国民の健康や環境を守ろうとする政府をつくっていかないと、人間も自然環境もむちゃくちゃにされてしまいます。今は過渡期というか重要な岐路で、いい方向に向かっていくことを信じたいものです。
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by 硲 允(about me)
遺伝子組換え食品はすでに出回っていますが、「ゲノム編集食品」は、今後商業生産・販売が開始され、食卓にのぼるかもしれない新たな人工食品です。
遺伝子組換え食品は、「他の生物の遺伝子を組み換えた(組み込んだ)もの」ですが、記事の説明によると、ゲノム編集食品は、
遺伝子(DNA)を酵素で切断したもので、「切断しただけで自然修復されるもの」(SDN-1)、「切断すると同時に他の生物の遺伝子を組み込むが、導入遺伝子を手本に修復され、導入された遺伝子は残らないもの」(SDN-2)、「切断後、修復時に導入された有用遺伝子が残るもの」(SDN-3)の3種類がある
そうです。
2019年3月27日に厚生労働省の新開発食品調査部会が発表した報告書「ゲノム編集技術を利用して得られた食品等の食品衛生上の取扱いについて」という報告書では、SDN-3は遺伝子組み換え食品と同様に安全性審査が必要だけど、あとの2つでは安全性審査が必要ないとしています。
安全性に問題がないので任意の届け出をすれば販売してもOK、としていますが、SDN-1とSDN-2の安全性に問題がないという理由の一つは、他の生物の遺伝子が食品に残っておらず、自然の突然変異や従来の育種技術によって突然変異を誘発させたものと見分けがつかないから、というもので、非常にずさんな感じがします。
見分けがつかんから、それで大丈夫なんかい?
その後、ゲノム編集食品の表示義務化見送りについても報道されていて(毎日新聞)、消費者庁は内閣府消費者委員会の食品表示部会で「従来の農産物との違いを科学的に検証できず、義務違反の特定は困難」とする考えを示し…とのことですが、違反の特定が困難だから義務化はやめておこう、というむちゃくちゃな論法です。泥棒に入られても、犯人を見つけるのは困難だから泥棒を取り締まるのはやめておこう、というのと同じような感じがするのですが…。
上の週刊金曜日の記事によると、EUでは2018年に、欧州司法裁判所が「自然には発生していないやり方で生物の遺伝物質を改変する突然変異誘発によって得られた生物はGMO(遺伝子組換え作物)に該当すること、従来から多く利用され長い安全性の記録のある突然変異誘発技術は非該当である」として、育種技術とゲノム編集とは別ものなので安全性審査が必要だと判断しているそうです。
人間のふつうの感覚で考えて、自然の突然変異と、遺伝子を人工的に切断するのは違うやろ、という感じです。他の生物の遺伝子が食品に残っていないとしても、そもそも人工的に遺伝子を切断した作物を食べたいかどうか…。そこは個人の感覚の問題でしょう。別にええやろ、と思う人もいれば、そんなのは不自然だし不自然な食べものを身体に絶対入れたくない、と考える人もいて当然だし、後者のほうが自然な感覚だとぼくは思うわけです。
表示を義務化しないと、選択の自由が奪われます。食べたい人はどうぞ、食べたくない人にも否応なしに食べさせます、では困ります。
国内でもゲノム編集技術を利用した作物を開発中、とのことで、たとえばどんなものがあるかというと、切っても涙のでないタマネギ(涙が出てこそタマネギや!)、目が出ても毒素が含まれないジャガイモ(芽が出る前に食べたらええだけやん。芽が出たら土に埋めて増やそう!)、時間が経っても白いままのマッシュルーム(お化けかい!)、養殖中に網に激突して死なないようにおとなしいマグロ(元気なマグロがええわ!)、筋肉が増強されたマダイ(ボディービルダーに任せとこうよ!)、というようなラインナップで、別に無くてもいいやろ~、という感じです。
「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」が下のような署名を集めているので、署名しておきました。
【要請事項】
1.ゲノム編集技術でつくられた作物・家畜・魚類等のすべてについて、環境影響評価を義務付けてください
2.ゲノム編集技術でつくられた作物等のすべてについて、食品安全性審査を義務付けてください
3.ゲノム編集技術でつくられた作物等及びこれを原料とする食品について、表示を義務付けてください
【宛先】
厚生労働大臣、農林水産大臣、環境大臣、消費者庁長官
同キャンペーンは、ゲノム編集食品のリスクについて、こう説明しています。
「ゲノム編集」は従来の「遺伝子組み換え」よりは高度な技術で「遺伝子の特定部分を狙い撃ちで改変できる」と言われますが、実際には想定外の場所に変異が起きる「オフターゲット作用」が知られ、不確実な部分があることもわかっています。また遺伝子組み換え同様、操作の過程で遺伝子が傷ついて、成分が変化したり、予想外の毒物が生成される可能性も否定できません。また、操作された生物がいったん野外に出てしまえば、元に戻すことは難しく、深刻な環境影響が出ても取り返しがつきません。
ちゃんと議論し、国民の健康や環境を守ろうとする政府をつくっていかないと、人間も自然環境もむちゃくちゃにされてしまいます。今は過渡期というか重要な岐路で、いい方向に向かっていくことを信じたいものです。
【関連記事】
by 硲 允(about me)