NHK受信料徴収を拒否するためにワンセグ付きケータイを壊そうとした話

SONYの小型テレビ

もう何年も前から家にテレビのない暮らしをしています。外食先でテレビがついているのを時々見ると、ネットで調べたら数分で済みそうなことをもったいぶって引き延ばしてCMも入って、「なんじゃこりゃ」と思うような番組でも、視聴者の興味を引き続けるようにうまくつくってあるので、ついつい目がテレビに行ってしまいます。中には面白い番組もありますが、見始めるとずいぶん時間を取られてしまうし、音と言葉が絶え間なく流れて自分で考える時間を与えてくれないのが疲れるので、基本的にテレビは見ないことにしています。

東京で暮らしていた頃、NHK受信料を徴収する人が時々やって来ました。

「テレビはないので」と言うと、「ケータイかスマホを持ってますよね? ケータイやスマホにもテレビが見れる機能が付いてますので、お持ちでしたら払っていただく義務があるんです」

というようなことを言われました。「義務」という言葉を使ったかどうかは記憶が定かではありませんが、支払って当然、というような言い方でした。

ぼくは何かにイラついていた時だったようで、ケータイを取り出して、「じゃあ、テレビを見れないようにアンテナを壊しますよ」と言って、アンテナを伸ばすと、徴収係の人は慌てて、「いいです、いいです、そこまでしなくて・・・!!」と驚いてすぐに去っていきました。

どうせテレビは見ないので、NHKの受信料を支払うくらいならアンテナを壊したほうがいいと思って本気で壊そうとしたのですが、 それは後で問題になる可能性があると思ったのか、あっけなく支払いを免れました。

これについて、最近、裁判で判決が出たそうです。ワンセグ付き携帯電話を所有する人がNHK受信料の契約を結ぶ義務があるかどうかを争った訴訟で、さいたま地方裁判所が8月26日に「契約義務はない」との判断を示したそうです。

放送法上、携帯電話の所持は、受信契約を締結する義務があると定められている「受信設備の設置」には当たらない、との判断だそうです。たしかに、ケータイやスマホは「設置」するものではないので、現行の放送法ではそう考えるのが妥当だと思います。

この放送法ができた当時は、ワンセグが登場することを想定できておらず、今後、「設置」しなくてもテレビが見られる機器がいろいろ増えていきそうなので、法改正が必要だという議論もあるようです。

いずれにしても、実際にテレビを見ない人から受信料を徴収できる制度はおかしいし、お金を支払ってでも見たい番組を放送しないと、わざわざ受信料を支払って見る人はいなくなるでしょう。

NHKはウェブサイトで、「公共放送は必要なのか?」という質問に対し、こう答えています。

公共放送は必要であると考えています。公共放送の使命や役割は、視聴者のみなさまからいただいた受信料をもとに、放送の自主自律を貫き、視聴者の判断のよりどころとなる正確な報道や豊かで多彩なコンテンツを全国で受信できるよう放送することで、民主主義社会の健全な発展と公共の福祉に寄与することです。
NHKは、こうした使命や役割を果たしているのでしょうか?

NHKの籾井勝人会長は、熊本大地震の原発への影響について、「政府の公式発表以外は報道しないように」と指示していたそうです。(NHK籾井会長が地震報道で「原発は公式発表以外報道するな」と指示! |LITERA/リテラ

NHKの国会論戦ニュースには、「必ず政府側答弁で締めないといけない」という暗黙のルールがあると、ジャーナリストの大谷昭宏氏が指摘しています。(NHK秘密のルール 政府に都合の悪い国会中継中止できる?│NEWSポストセブン

元NHKのプロデューサーで、武蔵大学の永田浩三教授は、IWJのインタビューで、

今のNHKは『みんなのNHK』になっていない。『安倍政権のNHK』になってしまっている。

と発言しています。

ちなみにIWJは、無料で視聴できるコンテンツもたくさんありますが、有料会員の購読料によって成り立っている報道メディアです。

「判断のよりどころとなる正確な報道」なら、お金を支払ってでも視聴したいと思いますが、「公共放送」といいながら権力側に都合のいい報道しかできないなら、受信料の徴収はスムーズにはいかず、渋々支払われたお金しか集まってこないでしょう。


【関連記事】

by 硲 允(about me)