「醒めない」スピッツの曲から読みとる社会的メッセージ。

ぼくは小・中学生の頃からスピッツを聴いてきて、特に高校生の頃は毎日のように聴いていました。

スピッツをあまり知らない方は、「空も飛べるはず」「チェリー」「ロビンソン」あたりを思い浮かべるかもしれませんが、世間ではあまり知られていないアルバム曲にもいい曲がたくさんあり、当時から進化し続けているスピッツの最近の曲をぜひ聴いてみてください。

最近は、時代も変わって、公式チャンネルでPVが公開されるようになりました。





東日本大震災以降に発売された前回のアルバム「小さな生き物」から、社会的なメッセージが隠喩的に散りばめられているようにぼくは読みとっています。

知らないままで 過ごせるならば そのほうがよかったこととか
たくさんあるよ だけど今だに アホな夢見てる
(小さな生き物)

ぼくもそうですが、震災以降、社会のおかしなことをいろいろ知り始めた人が増えてきました。知らないままで過ごせたほうがラクだと思えるときもありますが、知ってしまった後は、知らない自分には戻れません。知ってしまって、どうしようもないように思える世の中に嫌気がさしても、それでもアホみたいな(他人にアホだと思われるような)夢(理想)を描き続けている、というようなイメージでぼくは聴いています。

同じ曲「小さな生き物」に、こんなフレーズがあります。

深く掘って埋めても 無くせないはずだから

これを聴いて、福島第一原発からばらまかれた放射性物質を思い浮かべました。そんなのは勝手な解釈だと言われそうですが、そういうドキっとするような歌詞がところどころにあります。

スピッツの歌詞は、解釈の自由度が大きいので、こうだと言い切ることはできませんが、それがまたいいわけです。


先日、楽しみに待っていたスピッツのニューアルバム「醒めない」が、コープ自然派から野菜と一緒に届きました。




このアルバムに収録されている「SJ」という曲は、こういう歌詞で始まります。

夢のかけらは もう拾わない 君と見よう ザラついた未来
正しいと信じた 歩みが全て 罪なこと 汚れたことだとしても

「正しいと信じた 歩みが全て 罪なこと 汚れたことだとしても」と歌いながら、ボーカルの草野さんの声には、前を向いて進んでいく希望と力強さと優しさが感じられ、ちょっと泣きそうになりました。

この曲には、「高みから もたらされ 幸せなフリができるような」というフレーズもあります。

高み(権力側)からもたらされた「夢のかけら」で「幸せなフリ」もできるけど、「もう拾わない」と。

2番では、こう歌われています。

夢のかけらは もう拾わない これからは 僕が作り出すから

次の曲は「ハチの針」。

ハチの針を隠し持って「どでかいヤツ」(権力者)に反抗していくデモソングのようにきこえます。

反抗の相手ときっかけは、こちら。

賢そうな物腰で 話しかける亡霊
バカにもわかるように導かれる
でもすでに気づいちゃったんだ 甘い声の向こうで
ウラハラな汚れてるLOL

そして・・・

僕のこと捕まえたいとか なぜ?

こんなフレーズがさらっと入っています。

バラバラがまとまる 反抗の風

ここを聴いて「野党共闘」を思い浮かべましたが、この曲がつくられた時期を考えると「オール沖縄」でしょうか。

消せない胸のピースマークと夕陽の色
忘れないだろうキラめいた汗と希望

昨今の街頭デモのシーンが蘇ってくるような描写です。


次の曲名がなんと「モニャモニャ」。

モニャモニャは撫でるとあったかい
この部屋ごと 気ままに逃げたい
夢の外へ すぐまた中へ

現実を直視しながらも、夢と現実を行き来するようなアルバムです。

まだ全体を3回くらいしか聴けていませんが、曲の世界が深すぎて、3回聴いただけでは表面的にさらっとしか理解できていない感じがします。100回聴いても飽きることはなさそう。



醒めない(通常盤)



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