by Bing Translator / 127829321@N04 |
英語が得意な方から、翻訳の仕事について相談を受けることが時々あります。
ぼくは大抵の場合、おすすめしません。
なぜか??
- 英語ができても、翻訳となるとまた別のスキルが必要で、それを身につけるには結構な時間と労力がかかるので、すぐにできる仕事ではない(翻訳の仕事自体が好きなら、そういう努力は厭わないと思いますが、英語ができるのでその能力を使った仕事がしたい、という動機では、道が長すぎる)
- ようやく翻訳の仕事ができるスキルがついたとしても、たいていの仕事は報酬が安い(字数当たりの契約なら、英語から日本語の翻訳で1語当たり10円で高いほう)
- 自分の好きなものを訳せるとは限らない(社内翻訳の場合、頼まれたものを何でも訳さないといけないし、フリーランスとして翻訳エージェントに登録しても、どんな仕事を依頼されるかわからない。好きなものだけを訳して生計を立てていける人はごく一部)
学生の頃、プロとして通訳や翻訳の仕事をしている方たちに、「翻訳では食べていけない」と言われたことがあります。
たしかに、生活費の高い都会で暮らして、しかも自分一人ではなく家族の生活費を稼いでいこうと思ったら、翻訳の仕事ではかなり厳しい場合が多いと思います。
本を訳して大ヒットして印税がたくさん入ったり、「売れっ子」翻訳者で一般的なレートより高い翻訳料をもらって次々に仕事をしていける能力があるような場合を別にして。
ぼくが会社を辞めて翻訳の仕事を始めた頃、翻訳の仕事を見つけようと思ったら翻訳エージェンシーに応募して試験を受けて登録してもらうのが主なルートでした。その場合、「翻訳経験~年以上」という条件が付いていることが多く、経験のないところから翻訳の仕事を見つけるのは難しいという状況がありました(ぼくは経験年数が少なかったので、応募できるところも少なく、応募しても返事のないところがほとんどでした)。
今では、「Lancers(ランサーズ)」や「CrowdWorks(クラウドワークス)」などができて、翻訳の経験がなくても英語ができれば応募しやすい案件が見つかりやすくなりましたが、安くても仕事を請ける方が多いようで、「こんな料金でやる人おるん!?」とびっくりするような料金設定になっていることが多々あります。
「安かろう悪かろう」で、ひどい仕事が上がってきたのを見たこともあります。依頼する側としても、あんまり安い相手に依頼するのはリスクがあります。特に、依頼者側に翻訳の質を評価できる体制がなければ、翻訳のミスが重大な過失につながるおそれもあります。もちろん、安い料金で質の高い仕事をしている翻訳者もいると思いますが、安い仕事で生計を立てていねばならないとなると、質を落としてでも数をこなす必要に迫られ、仕事が荒くなるものだと思います。
翻訳の仕事というと、語学ができれば「さらさら」っとできる仕事だと思われる方もいると思いますが、実際には、調べものの連続で、小さなミスが致命的になるので神経をすり減らす重労働です。
翻訳の仕事でまともに生計を立てていける市場をつくっていかないと、「内職」感覚で安くても仕事を請ける人ばかり増え、翻訳業界全体のレベルが下がっていく可能性があります。
こんな現状でも、とにかく翻訳が好きなので翻訳の仕事をして生活していきたい、という方は、できることなら、生活費のあまりかからない田舎で暮らすという選択肢もあります。幸い、翻訳の仕事はパソコンとネット環境があればどこでもできるので。
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