イケダハヤトさんの新著「まだ東京で消耗してるの?」読了。消耗してない人にもオススメ。


ぼくは一昨年、東京から香川へ移住し、もう東京で消耗していませんが、プロブロガーのイケダハヤトさんの新著「まだ東京で消耗してるの?」、購入して読み終えました。

とにかく面白くて、読み始めると止まらなくなって一気に読んでしまいました。

イケダハヤトさんは、面白いことだけを面白く、読者を引き付けて書く筆力がすごいなぁと、改めて思いました。すでにブログで読んだことのある内容でも、また夢中になって読んでしまいます。

実を言うと、ここ最近ブログをよく拝見していたので、本は書店でさっと座り読み(試し読みできる椅子があるので)すればいいかなぁと思って読み始めたら、夢中で読んでいるうちにあっという間に2時間ほど経ってしまい、もう8割ほど読んでしまっていたのですが、これだけ読み込んだ本を棚に返すにも気がひけて買ってきたというわけです。

それにしても、こんな挑発的な新書は見たことがなくて、それだけで面白すぎます。

まず、タイトルからして、(ブログと同じく)「まだ東京で消耗してるの?」。帯には、「東京は人生を貧しくする! なんでさっさと移住しなかったんだろう」。帯の背表紙側は、「もう東京は卒業しよう ーー」。第一部の見出しは、「東京はもう終わっている」です(!)。

そして本文でももちろん、ブログと同じく読者をどんどん挑発していっています。

イケダさんの文体には、独特のリズムとテンポがあります。イケダさんの主張に共感している人も、反発を感じている人も、イケダさんのリズムとテンポに乗せられているところが大きいのではないかと思います。そういうぼくも、イケダさんのブログを読み始めると中毒的に読んでしまって自分の執筆がおろそかになってしまうので気をつけています。

ぼくはイケダさんの挑発的な文章を読んでも全く腹が立たないのですが、それは、もう東京で消耗していないからでしょうか? いや、そんなこともないような気がします。おそらく東京で消耗していたとしても、こんな方法があったのか!と希望を感じてワクワクしながら読んでそうな気がします。

イケダさんの文章には挑発的な表現が多いですが、決して読者を見下したりバカにしているわけではないと感じるのです。こっちのほうが絶対楽しいのに!という気持ちをこれほどストレートに表現している人はそうそういません。こっそり自分だけ楽しんでいたり、得をしていたりしているのに、他人に羨ましがられたり嫉妬されたりするのがこわくて黙っている人もいると思いますが、イケダさんはそれとは正反対です。

それにしても、イケダさん自身がかつて東京でこれほど消耗されていたとは、この本を読むまで知りませんでした。ぼくも東京に学生時代を含めて10年ほどいましたが、在宅ワークが多かったので、それほど消耗せずに済みました。東京で消耗されていた頃と、高知に移住されてからの暮らしの落差の大きさが、このような力強いメッセージを生み出しているのだと思いました。

イケダさんが高知に移住されたのは2014年6月。それから約1年半の間に、移住や地方での暮らしについて、体験にもとづいた知識や考えをこれだけ蓄積され、ブログを毎日大量に更新されながらこんな面白い本まで書かれるとは、その生産性の高さに改めて驚き、見習いたいものだと思いました。

本の中身ですが、共感することだらけでした。

第3部は、「限界集落に移住して、こんな幸せになりました」。ぼくが住んでいるのは香川県の綾川町というところで、限界集落ではなく、山の上でもありませんが、この章で紹介されていることと似たような経験をしていることが多くありました。

第3部の小見出しを引用しながら、ちょっと書いてみたいと思います。

「月3万円で駐車場・庭・畑付き一軒家に暮らす」
ほんとに、地方ではそういうのが普通です。うちは、月1万円で、庭(車も数台とめられます)・田畑付きの一軒家を借りています。

「地方ではクルマが必需品だ」という真っ赤なウソ
うちにもクルマはありません。田んぼと畑の広がる町ですが、自転車と電車を使えば普段の生活はこと足ります。ありがたいことに、車でしか行けないところへは、親切な友人たちが一緒に乗せていってくれます。

「心から美味しいと思えるものが、地方では信じられない安さで手に入る」
高松の「大日本社員食堂」というお店に初めて行ったとき、無農薬か減農薬の野菜たっぷりのお惣菜ランチ(お惣菜は一回だけとり放題)が650円だったのはびっくりしました。東京のお店でこのメニューだと、絶対に1,000円以上します。

「高価な会食より断然喜ばれる「家飲みバーベキュー」」
うちはバーベキューではなく、おかずの持ち寄り会をすることが多いのですが、これが楽しいんです! 外で食べると高くつくし、その割に美味しくないお店にあたったりすると最悪ですが、家だと畑でとれたての新鮮な野菜を使って、自分たちの好みのものを持ち寄れて、閉店時間を気にする必要もありません。

「悪い人の絶対数」が少ないという地方の安心感
香川も「悪い人」が少ないように見えます。夜の繁華街でワルそうな格好をしてたむろしている若者たちも、東京の若者に比べて、純朴そうな顔をしています。近所でおそろしい犯罪が起きたという話も聞きませんし。暮らしにゆとりのある人が多いからでしょうか・・・そんなにヤバそうな人は見掛けません。


そんな感じで、共感することだらけで、おそらく地方に移住した人はみんな同じような経験をしていることでしょう。

この本では、そのほか、東京よりも田舎のほうが稼ぎやすいという話(イケダさんの実例をもとに)や、「ないものだらけ」の地方だからこそ可能なビジネスなども紹介されています。

ここで紹介されている「空き家のリノベーション」や「タイニーハウス村」、「バイオトイレ村」「自伐林業」など、ぼくもとても興味があります。「なるほど〜、そういうのも楽しそうやなぁ〜」と、ワクワクするようなアイデアがいろいろ紹介されていて、「東京で消耗している」方だけでなく、既に地方に移住していて、これから何をしようか考えている方にもおすすめの本です。

第5部は、「移住で失敗しないための5つのステップと知っておくべき制度」。

こんなに挑発的な文章を書かれておきながら、移住をしたい人にこんなに懇切丁寧に説明してあげているのが、イケダハヤトさんのなせる技です。

「やりたくないことリスト」を作る、生の声を聞く、など、ステップごとに解説されていて、これから移住する人にはマニュアル的に活用できます。生で仕入れた失敗談も紹介されていて、田舎暮らしのリアルな現実も垣間見れます。

本の終盤には、「妻へのインタビュー」や、移住に関する「よくある質問」とそれに対する回答も掲載されていて、これだけの内容で800円(税抜き)は安いと思います。



まだ東京で消耗してるの? 環境を変えるだけで人生はうまくいく (幻冬舎新書)