翻訳や執筆で日本語に迷ったら、google先生に教えてもらおう。



通訳や翻訳の勉強を始めた頃、英語力が不足しているのに加えて、日本語の能力を伸ばすことも課題でした。

プロの通訳者である先生たちからぼくのおかしな日本語を指摘されても、自分ではあまりピンときませんでした。自分の日本語がおかしいことすら自分ではわからない。それが最初の段階のようです。

だんだんと軸足が通訳から翻訳に移ってからも、日本語の力のなさをますます痛感するようになりました。日本語を母語とする日本人が英語と日本語の翻訳をする場合、英語から日本語に訳すほうが初心者のうちはやりやすい。言語というのは、読めば理解できるけれど自分で書くことはできない表現というのがあるので(自分で使える語彙を「アクティブ・ボキャブラリーなどと言います)。

英語から日本語に訳すとなると、完成物は日本語の文章になるわけです。英語を正確に理解せずに誤訳するのは致命的ですが、 英日翻訳の場合、日本語がいかに正確でわかりやすく、適切な文体であるかが重要になってきます。英語を直訳してしまい、「意味はわかるけど、普通こんな日本語書かないなぁ」というような訳ではアウトです。

翻訳の仕事を始めた頃、「こんなふうに言うかなぁ?」と不安に思った日本は、面倒ですがその都度、インターネットで検索して用例を確かめました。ウェブ全体で検索すると、おかしな日本語もたくさん出てきて、たいていは同じようなヘンな日本語を使っている人がいるので、ニュース検索で絞り込みます。ニュース記事といっても、崩した表現で書いているサイトも多いので、サイト名を見て信憑性を自分で判断する必要があります。

例えば、「事業を拡大」でニュース検索をしてみると、22,900件ヒットしますが、「事業を増大」という言葉で検索してみると、ニュース検索では0件。ウェブ全体の検索結果でもたったの1件しかヒットしません。その1件というのは、大和総研のコラムで、「公共事業を増大させ」という文脈で使われています。大手企業のコラムで使われているとはいえ、1件しかひっかからないということは、まず使われることのない言い回しだということがわかります。

翻訳で日本語の文章を書く場合、こういう一般的でない言葉は使うべきではないでしょう。ただ、 翻訳ではなく日本語で自分で文章を書く場合、誰も使わない表現でも、自分の表したいニュアンスを出すために、あえて普通には使われない言葉を選ぶこともあります。

検索の基本テクニックですが、「事業を拡大」など、フレーズに完全に一致する検索結果だけを出す場合、二重引用符(" ")を用いて "事業を拡大" と入力する必要があります。

翻訳の仕事をしはじめた頃に比べると、この方法で日本語の用例を検索することは減ってきましたが、不安があれば必ず調べることにしています。これをするのとしないのでは、翻訳の質も、日本語の上達スピードもかなり違ってくると思います。

翻訳の初心者の方が訳した文章を見ると、この作業を怠っていることが多いです。自分が書く日本語に自信がないのに面倒で調べていないのか、そもそも、昔のぼくがそうだったようにおかしいとも何とも思わないないのか、どちらなのかはわかりませんが。ちょっとでも不安を感じたら、調べてみるといろいろ発見があります。