ある日、山仕事から家に帰ると、部屋が傾いているように見えました。
この家は少しゆがんでいるようで、部屋を仕切る引き戸の一部に木を継いで高さを合わせていたり、廊下の床板を張るときも長さがくるっていたり、あちこちで帳尻を合わせながら持ちこたえているように見えます。
戸や柱や襖などは垂直に設置されているものだと考えるから、普段、脳は部屋で視界に入るものに合わせて水平感覚を調整しているのかもしれません。
ところが山の斜面を上ったり下りたりしているうちに、水平感覚がリセットされ、家に帰ると部屋が斜めになっているように見えたのだと思いました。
「普段、こんなにきちんと水平になったところばかりにいるのがそもそもおかしい、というか人工的過ぎる」と、山から帰ったすぐ後で、近所のマルナカ(スーパー)のつるつるした水平な床を歩きながら思いました。
町に出ても、職場にいても、家に帰っても、どこも平坦で、現代に生きる人間の水平感覚が鍛えられる機会というのはあまりないのでは。
たまには山を登り下りして、自分の水平感覚を取り戻してみるのはどうでしょうか?(帰ったら家が傾いているかもしれません!)