「移住」が一種のブームとなるなか、自動車免許を持っていない人や、車を持ちたくない人もいるので、地方(田舎)でも車なしで暮らせるかどうかは、よく見聞きするテーマです。
不毛な議論の多くは、言葉の定義をはっきりさせていないところから生じます。
「車がなくてもいける!」「無理でしょう!」と、両方の意見があると思いますが、そもそも、地方(田舎)と聞いて想像するものが人それぞれなので、それを明確にしないことには話になりません。それから、「どんな暮らしをするのか」にもよります。
ぼくは香川県の綾川町というところに2年前から移住し、車なしで暮らしています。
「地方」をどう定義したところで、おそらくここは「地方」に入るでしょう。「田舎」といえば「田舎」でしょう。家の周りには、新しめの団地もありますが、田んぼや畑が多く、放置された竹林が茂り、いかにも「田舎」の風情です。しかし、自転車でちょっと行けば、国道沿いにイオンがあり、その隣りにはコーナンやケーズデンキが並び、交差点の対角線上にローソンが2軒あり、都会的な店もある田舎です。
「都会」と「田舎」の違いは、どれだけ自然が残されているか、大きなビルやマンションやおしゃれな店があるか、人口はどれくらいか、というようなことでしょうか。そういうような違いを考慮して、人それぞれ、「都会」と「田舎」の線引きをするわけです。その間の微妙なラインの町は、「都会」なのか「田舎」なのか、意見のわかれるような場所もあるでしょう。
今住んでいる家から最寄りの駅までは自転車で5〜10分で行けて、電車は15分に1本くらいあるので、高松まで簡単に出られます。日常の買い物は近所のイオンやマルナカ(香川のあちこちにあるスーパー)か済み、そこにないものは高松まで行けばたいてい揃うし、今の時代、インターネットで探せば何でも家まで届けてもらえます。
ことでん(高松琴平電気鉄道)の駅に近いところに住み、勤務先も電車や自転車でいける場所にあるか、あるいは在宅ワークなら、車なし生活は可能でしょう(小さなお子さんがいて、遠くの保育所まで送り迎えしなければならない、というような場合はまた違ってくるでしょうけど)。
同じ綾川町でも、山のほうに行くと、車なしではとても無理!というな場所ももちろんあります。移住前に家探しをしていたときに紹介してもらった空き家は、山の上で景色のいい場所だったのですが、最寄りのバス停が1時間に1本とかで、帰りは一番遅くて夕方の4時頃だったので、これは無理だと諦めました。
とはいえ、「どう暮らすか」によるので、こういう山のほうでも、在宅ワークでほとんど家にいるような暮らしがしたくて、町に出るのはときどきバスで行って早く帰ってくればそれで十分、という場合、こういう山の中でも車なし生活は不可能ではありません。
ちなみに、最近は毎週のように車に「乗って」います。「車なし生活」といいつつ、たしかに車は「持って」いないのですが、遠出するときは毎回、仲間や友人たちが、途中で拾って乗せていってくれます。ありがたいことです。そのおかげで、ずいぶん行動範囲が広がっています。
結局は、地方や田舎といっても場所によりけりで、どういう暮らしをしたいかも人それぞれなので、移住場所を探すなら、まずはどういう暮らしをしたいかをはっきりさせ、それに合った場所を見つける、というのが一般的な順番でしょう。もちろん、「場所ありけり」というのもありですが。他人の意見を参考にしつつ、「自分で考える」ことが大事だと思います。